親の価値観で生きてきた人はもっと自分にアンテナ張っていこう

人はそれぞれ異なる価値観を持って生きています。

その「価値観」というものは、遺伝や周囲の環境、社会的体験や文化的背景等の影響を受けながら、各々独自の「色彩」を帯びてくるわけですが、

時々、「小さい頃から支配的な親に育てられた」等の理由によって、「自身の親」の影響を強く受け過ぎてしまう人がいるわけですね。

・生きていく中で、自分がどんなことを経験してきたか
・またその中で自分は何を思ったか

といった、「自身の体験」をベースに生き方を決めるのではなくて、

・その言動を親はどう思うのか
・その選択を親はどう評価するのか
・その行動を親は認めてくれるのか

のように、「親の価値観」をベースに自身の価値観を決めてしまう人がいるわけですね。

ある程度、自身の価値観と親の価値観が似通っているとか、
親の価値観を自身の中に上手く取り込むことが出来たような人であれば、そこまで大きな問題にならないかも知れないですが、

親とその子供は本来別の人間なわけですから、どこかで親の価値観を窮屈に感じたり、親の価値観に従って生きることが性に合っていないと感じたりする人も当然出てきます。

そうした人が、
「なんかこの価値観に従うのは窮屈だし嫌だな」
と感じられればまだ良い方なのですが、

一部の人は、
親の価値観に自分を合わせなければ」と頑張ってしまうあまり、
「親の価値観を“嫌だ”とか“窮屈だ”と感じる自分は間違っている」
と、自分の内面から生じてくる自然な感情を押し殺して、その代わりに偽物の感情を作り出し、

次第に頭の中で生み出した「偽物の感情」の方が優勢になっていって、その結果、
自分の本当の気持ちや感覚にアクセス出来なくなって
いきます。

こうした人からは、
・本来持っている自然な感情へのアクセスが難しいことと、
あらかじめ親によって価値観が決められている
こととの二重の阻害要因によって、

自身の社会的体験から、自分の思ったこと・感じたことをベースに「自分の生き方」を決めていく能力が育っていきません。

その結果、自分で物事を決めることが出来なかったり、自分の頭で考えることが出来なかったり、親がいなければ人生の指針を失ってしまったりする、ということが起こってきますし、

「自分の価値観」に殆ど沿えず生きているので、人生に対してどこか虚しさを覚えてしまうこともありますし、

「自分で自分の人生をコントロール出来ない」ことによって、「自分に自信を持てない」状態に陥ることも、あり得てくるでしょう。

従って、これまで自分の価値観でない価値観で生きてきたという人は、
「どうにかして人生に主体性を取り戻していきたい」
と考えるのが自然かも知れません。以下ではその方法について思うところを書いていきます。
 

さて、「親の価値観から抜け出して、自分で自分の生き方は決定したい」
と思う人は、手始めに
自分の好きなもの・こと

自分の嫌いなもの・こと
を見つける作業から取り組んでいくのが良いと思います。

長年自分を押し殺して生きてきた人は、自分の感情へのアクセスに困難を抱えている場合がありますので、まずは「自身の好き/嫌いは何か?」といった簡単な問いから出発するのが良いと思います。

続いて、自身の好き/嫌いが分かったら、人生の中に積極的に自身の「好き」を取り入れ、「嫌い」を回避する生き方が出来ないものか、考えると良いと思います。

人生の中で自分の「好き」が増え、「嫌い」が減っていくと、自身の心に余裕が生まれてくるのですが、

この「自分の心に余裕が生まれている状態」というものは、“健全に自分を取り戻していく”上で必要不可欠なものになってくると思われるのです。

要するに、

本来の自分を取り戻すため、
「自分の好き/嫌いなものは何か」から出発して、次第に、
「自分はどういう人間なのか」「自分はどんなことに心動かされるのか」といった“抽象的な問い”を自身に投げかけ、もっと具体的に
「自分はどういった価値観を持つ人間なのか」
を探っていくようになると思うのですが、そうした“問い”に対する回答は、必ずしも“自分にとって都合の良いもの”ではないかも知れないわけです。

例えば私の場合、小さい頃から父に
「たくさん勉強して社会的に偉くなれ」
と言われ続けて育ったためか、
・頭が良い
・社会的ステータスが高い
ことに対してめちゃくちゃ価値を感じる人間になったのですが、

実際のところ私はあまり頭が良くなく、社会的ステータスも皆無、今後の伸びしろに関してもかなり期待薄な人間なので、
「頭が良くて社会的ステータスのある人間に多大な価値を感じること」
は、私の中で、あまり得をしない(むしろデメリットの多い)価値観に感じられるわけですね。

ですから、これまでの私は、
「そうした価値観は自身の得にならないから別の価値観に置き換えよう」
と“価値観の転換”を図ったのですが、そうした試みは全然上手く行かなくて、

そのうち、
「こんなしょうもない価値観に縛られる自分はダメな人間だ」
といった“自己否定”にまで発展していってしまった経験があるわけです。

最近、自分を取り戻す上で、
自分の本来の価値観を否定せずありのままに受け止めること
が本当に大事だなと思っていて、

仮に、
「自分にとってあまり得にならないような価値観」
が自身の中に眠っていたとしても、それを
まあそれも自分の一部だから
と寛容に受け入れられることが、健全に「自分を取り戻す」上でのキーになると実感しているのです。そうしなければ、「本当の自分はこんな人間じゃないのに」と、決して埋まることのない「理想-現実」のギャップに苦しみ、自己否定感を強めてしまいかねませんから。

「自分にとってそこまで好ましくない自己も寛容な心で受け入れる」
ことは、自身の心に幾何か余裕がないと難しいことなのです。

ですから、先に述べた
「人生の中で自身の好きなものを取り入れ、嫌いなものを回避していく」
ことによる、“心の余裕の確保”が重要だ、と言ったわけですね。心に余裕さえあれば、自身の好ましくない部分も「まあそれも自分の一部だから」と認められるようになるのは先述の通りですが、こうした
「自分の良いとこも悪いところも自分の一部として受け入れられる」
能力は、自分を取り戻すことのみならず、自分に自信を付けるという点でも大変有効なのです。
 

自分を過度に押し殺し、他人の価値観に従って生き続けてきた人というのは、多分、真面目で頑張り屋で尚且つかなりの忍耐強さのある人だと個人的には思っているので、

持ち前の粘り強さで、コツコツと自問自答を繰り返し、一つ一つ自己を発見していくことによって、一日でも早く「本来の自分」を取り戻せると良いなと思っています。
 

ついでに、「僕/私は忍耐強くありません。なぜなら普通の人が耐えられることにも耐えられていないからです」みたいに自身を評価する人もあるかも知れませんが、

それは日常的に、
「自分を過度に押し殺し他者の価値観に従って生きる」
という、極度に心を磨り減らす消耗戦で精神的にギリギリな状態にいながら、外からやってくる困難に周りの人と同じように対処できなかったというだけの話なので、

それだけを以て、「その人は忍耐強くない」ことの証明にはならないかなと思っています。

他者の価値観を優先して生きてきた人達の「忍耐強さ」たるや、個人的には相当のものだと考えます。

3件のコメント

  1. この記事を読んだ時まさしく自分のことを言われているような気がしました。ふくろうさんと似たような家庭環境で、僕は小さい頃から沢山勉強して、大学に行きなさい。大学は絶対に出ておいた方がいい。副教科なんてそこそこでいいから、5教科はしっかりした成績を取ることを厳命されて生きてきました。

    高校時代から自分の指針なるものを完全に失いました。いざ自分の進路を決める所に位置すると自分がしたいことがまるで思いつかなかったのです。やけになって、何度も大学受験をしました。親を憎みながら、この家に生まれたことを憎みながら、自分の才能のなさを憎みながら、沢山勉強して、賢い大学に合格した姿を見せて、心の底では両親に認めてもらいたかったんだと思います。

    指針を失った10代20代を過ごしましたが、今の仕事と今の会社だけは自分の意思で決めました。高校時代に患い、親には甘えだと指摘されて、治療を放棄した鬱病を、10年間患い続けていることにも気付きました。

    後1週間で一人暮らしを始めることになります。一人暮らしを決めた時に、自分の指針が何もなかったことに気がつき、そして、プログラマーとしてのデビューを機に、自分の指針なるものが確立され始めていることにも気がつくことが出来ました。

    まだまだ鬱の治療は続けていきますが、自分の人生に希望が芽生え始めています。頑張り屋さんで根性があり、同時に深い思いやりを持っているふくろうさんの文章の意図する所もまた、この歳になり、この状況になり、やっと理解出来るようになってきました。

    1. そうだったのですか。うつ病のこととか、家庭環境のこととか…全然知らなかったです。かなりの期間、忍耐されてきたのですね。

      記事中では、歪な養育により“親の価値観”が“子供の主体性”を脅かしてしまう可能性について言及していますが、まさにすばるさんの仰る通りです。
      親の期待に応えよう
      承認して貰おう
      といった動機が、“本人の主体性”をまるごと飲み込んだとき、その人は自己喪失してしまいます。そして、主体性の失われた人生を生きることは結構しんどいものです。

      ご職業をはじめ、ご自身で色々なことを決めようと意識されていること、凄く良いと思います!
      是非、すばるさん独自の指針を以て、自分らしい、納得のいく生き方を目指していってほしいと思っています!共に自分を取り戻していきましょう!

      あと、一人暮らしは慣れてしまえばなかなか良いものですよ(笑)私も一人暮らしを経験したお蔭で、自身の内面を縛っているあらゆるものに気がつけた、という面もありましたし。お勧めです。

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